番外編(その7)

最後にFerrariの中でもSupercarsと呼ばれるカテゴリーがある。そうだ、スーパーカーの中のスーパーカーである。その最初のモデルが 250 GTOだ。GTOとは Gran Turismo Omologataいわゆる真のGTという意味である。1962年から1964年にかけ36台もしくは39台が生産され現在何台現存するか不明だがそのほとんどは各国の収集家とか博物館に展示されている。オークションにもほとんど登場しない現在、もし登場したとしても数億円ではとても落札できないであろう。これが隊員の夢の中でもほしい車ナンバー1である。

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世界で最も多く量産されたスポーツカーと呼ばれる日産の初代のフェアレディーZのデザインコンセプトのモデルとなったのもこの250GTOである。レースに勝つ事だけを目的に作られたこの車、チューブラーフレーム、Aアームのフロントサスペンション、ディスクブレーキ、3リッターV12エンジンと相まって1962年フロリダの飛行場をサーキットとしたセブリング12時間でデビュー後長年に渡り数々のレースを制して来た。この車こそGTの中のGT、世界最高のスポーツカーだ。

1964年に250 GTOはより戦闘力を高める為に空力を中心とした改良を受け3台が製造された。先端の3つのエアダクトがなくなり前後TreadとWheel幅が拡大され結果上記の250 GTOよりかなり幅広になった。 この改良型250 GTOは 63/64と呼ばれこの更にレアな3台のうち1台が日本の松田コレクションにある。ちなみにこの松田コレクション(箱根にある)の入り口を入るとドーンと置いてある 250 GTOは3/4縮尺のレプリカである。

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250 GTOでツーリングクラスのレースで数々の成功を収めたFerrariだが、技術の革新も早く Le Mans 24Hで代表される長距離レースでのプロトタイプクラスでは既にミッドシップエンジンが圧倒的な速さを見せ付けていたし、GTクラスでもミッドシップエンジンの優位性はもやは動かぬ物になって来た。Ferrariは1963年のパリショーにて 250 LMをデビューさせた。当時のレギュレーションではGTクラス(いわゆる市販車)は最低でも100台の生産台数が必要だった。上記の 250 GTOは他の 250 GTと同一というFerrariの主張が通り(実際は全くの別物だった)GTクラスでのレース参戦が認められたが1964年にFIAは 250 LMも他の 250 GTと同一だというFerrariの主張を退けた。実際にも32台しか生産されずFerrariはこの 250 LMをGTクラスでのレースでの参戦をあきらめプロトタイプクラスでのレースに投入した。1965年の Le Man24時間では並み居るFerrariのファクトリーカーやFordのファクトリーカー(GT40)がリタイアするというハプニングがあったにしろプライベートチーム(North American Racint Team)から参戦した 250 LMが総合優勝を飾った。この1965年を最後に以後Ferrariは一度もLe Manで勝利していない。320bpsを発生する3.3リッターV12エンジンをミッドシップに搭載し最高速は300Kmに達した。この 250 LMも 250 GTO同様市場にはほとんど出てこない。出たとしてもやはり数億円という値段が付くだろう。この車のレースにおける寿命は長く Steve McQueen主演の Le Mansという1970年のLe Mansを題材にした映画でもPorsche 917とFerrari 512とのバトルの間に多数のプライベーターの 250 LMが見受けられる。

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次にSupercarsと呼ばれるモデルは20年の年月を経て1984年に288GTOとして世に出た。奇妙な事にこの車はWRCのGroupBへの参戦を当初の目的として生産された。Ferrariに取ってメジャーなカテゴリーでは無いRallyへの参戦がどういう意味だったのか不思議だが、WRC GroupBへの参戦が認められる最低でも200台の生産台数を1986年に達成した時にはWRC GroupBというカテゴリーは消滅し結果一度もこの288GTOのRallyへの参戦は無かったが仮に参戦していたとしても4WDが主流の世界に何らかの実績を残せたかははなはだ疑問である。328のボディーをベースに3.2リッターでは無く2.8リッターのV8エンジンに改装された。容積は小さくなったがTwin Turboで武装され308、328がV8が横置きだったのに比較しこの288GTOは縦置きとされた。発表直後の価格はUS$9万だったのがその生産台数の希少さと性能から実際の販売価格は優にUS$100万を超えた。

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1987年に288GTOの後継機種として発表されたのがF40だ。一部コンポーネントを共有しながらボディーは一新されFerrari史上最も高価格そして最速の車となった。その性能は現在においても遜色がない。Ferrariの創立40周年を記念したF40というネーミング、創業者Enzoがその生涯を終える寸前にFerrariのPorsche、Lamborghiniに代表されるライバルに比較して必ずしもパフォーマンスで優位に立っていないという危機感から特にPorsche959に対抗すべく計画されたProjectとなったF40。2.9リッターの石川島播磨重工製Twin Turboが付いたエンジンからは478bpsを発生しレーシングカーと同じDouble Wishboneサスペンションと相まって際立った高性能車ぶりをはっきした。日本ではバブルの真っ最中に輸入され確か当時最高4億円以上で取引された。当初400台という生産計画は達成後も強い需要があり結果1,315台が販売された。

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1995年から1997年にかけてFerrariの50周年を記念して349台生産されたモデルがF50だ。288GTO、F40のターボチャージエンジンに代わりF1を基に開発された自然吸気NAの513bpsを発生する4.7リッター5バルブV12エンジンを搭載している。GT1クラスのレースへの参戦も計画されたがFerrariとしてF1にそのリソースを集中させた為にこれといったレースでの実績はない。Ferrariの大のお得意さまであるブルネイのサルタン用に1台特注された幻のF50もあった。

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2002年から2004年にかけて400台生産されF60とも呼ばれるモデルがEnzo Ferrariである。F1のテクノロジーが随所に用いられている、カーボンファイバー製のボディー、オートマチックトランスミッション、カーボンセラミック製ブレーキディスク等がそれだ。Pininfarinaによってデザインされ担当したデザイナーが奥山清行という日本人である事はNHKの「プロフェッショナル」というTV番組でも紹介された。シャーシーナンバーZFFCZ56B000141920という車は2005年6月28日行われた2004年暮に太平洋で起こった津波の被害者救済目的のオークションでリストプライスの約2倍の95万ポンド(約2億円)で落札された。実はこの車(400台目)、さきほど亡くなられたバチカンのJohn Paul2世にFerrariの従業員、パートナー、Michael Shumacher、Rubence Barrichello等が共同で贈呈した車である。オークションで落札された金額は現在の教皇Benedict16世経由で被害者の救済に当てられた。その他判明しているこの車のオーナーにはEric Clampton、Michael Schumacher、Nicolas Cage、Paul Allen(マイクロソフトの創業者の一人)らの名前があり当然ながら全員かなりのお金持ちである。

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2005年Ferrariは突如FXXというモデルを発表した。Enzo Ferrariをベースとしているものの、かなり研究開発的要素をもりこんでいる。エンジンはEnzoの6リッターから6.2リッターに拡大され馬力もEnzoの660bpsから800bpsへと増強されている。ギアボックスも最新のF1から取られておりギアチェンジに要する時間はたったの100msだそうだ。リストプライスは市販車として史上最高のUS$180万でそれまでの Schuppan 962CRというPorsche962ベースのカスタムカーが保持していたUS$150万を超えた。ちなみに史上第3位はMercedes-Benz CLK-GTRでこれもUS$150万である。このUS$180万という価格はあくまでリスト価格であり実際の取引価格は想像も付かない。FerrariはこのFXXを過去のFerrariオーナーから厳選した人達に既に販売済みでこの幸運な29人は今後の研究開発の一翼をになう訳だ。Enzo Ferrariもそうだったが、シート及びペダルの位置は一台づつオーナーの体格に合わせられた。オーナーはオプションとしてFXXの保管及び保守をFerrariに委託出来るそうだ。まずはモンツァで収録されたその走りのビデオを見てほしい。正に衣を着たF1カーが走っているようだ。

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これらSupercarsを一堂に会するとこうなる。手前2台が 250 GTOで一番手前の 63/64モデルがオリジナルの 250 GTOに比べかなり横幅が拡大されたのが分かる。

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次回はいよいよ最終回という事でFerrariのコンペティター達を少し紹介しよう。

コメント

  1. よしさま(*●。●*) より:

    250GTOは、いつ見ても良いですね。
    まだ、TVや博物館でしか拝見したことはありませんが、いつ見ても素敵です。
    昔、カーグラフィックTVでNYC郊外に住む日本人のおじいちゃんが普段使いに乗り回している姿が特集されていましたが、あの個体はどうなったのでしょうね?
    このクラスになると、精巧に作られたレプリカも多いらしく、よほど、素性がハッキリしていないととんでも無いモノを掴まされる事があると聞きました。

    お買い上げのお知らせを心待ちにしております。m(__)m

  2. YKK より:

    よしさま、

    レプリカでもそれなりにリーズナブルな価格なら、、、、、
    何処かで数億円の盗難事件をお耳にしたら、もしかしたら、、、、

  3. よしさま(*●。●*) より:

    レプリカにも、ピンキリ、色々ありますからね。
    YKKお師匠さまのお眼鏡にかなうレプリカと言ったら、かなり、程度の良い物でないと。
    私も、耳を拡げて、情報を収集しておきますね。

    以前、バイザッハのテストコースで、Le Mans優勝車のキーがついたままの917に乗ったとき、乗り逃げしようかと本気で考えたのは、内緒です。(^_^;

  4. YKK より:

    よしさま、

    危ない、危ない!
    次回はいよいよ最後です。でもPorscheが無いのが、、、、、

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